Kyoko Shimbun 2019.01.25 News

枯尾花中の幽霊部存続へ 滑り込み入部で廃部乗り超え 滋賀 これは嘘ニュースです

野球部の活動を眺める枯尾花中幽霊部。一番右が須々木部長
 12月中にあと4人集めないと廃部――。滋賀県の枯尾花中学校で、部員不足で廃部寸前だった幽霊部の存続が決まった。危機を救ったのは、1人でも活動に打ち込む部長の姿に感銘を受けた生徒たちだった。

 枯尾花中幽霊部は、同校設立以来80年以上続いてきた伝統ある部だ。幽霊部員の活動内容は「活動しないこと」。スポーツや芸術など様々な方面に興味や関心を持つ中学生にとって、部に所属しているにもかかわらず、何も活動しない部活動は一種の苦行でもある。

 「昨日はグラウンドでサッカー部の練習を見るだけでした」

 幽霊部部長の須々木さん(14)は活動内容についてこう話す。「自分のところにボールが転がってきても、決して蹴り返したりしてはいけないんです。幽霊のように気配を消してボーっと立っているのが理想です」。想像以上にストイックな姿勢だ。

 近年、枯尾花中幽霊部の部員数は減少の一途をたどっていた。特に昨年は「帰宅部」が創部した影響が大きかった。幽霊部と違い、放課後に他の部を眺める必要がなく、そのまま帰宅するだけで部活動として認められる気軽さから、それまで在籍していた幽霊部のほとんどが帰宅部へと転部。残った部員は須々木さん1人だけだった。

 「12月末に部員数が5人に満たない部は廃部とする」。同校が校則で定める廃部の規定だ。だが、幽霊部は「活動しない」という活動方針のため、部員を積極的に募集することができない。雪交じりの風が吹く中、須々木さんは毎日グラウンドや体育館で他の部活動を棒立ちで眺めることしかできなかった。

 しかし、終業式が行われた昨年12月21日、須々木さんと幽霊部に奇跡が起こった。

 「ずっと活動が気になっていました。幽霊部の部員にしてください」

 生徒4人が部長のもとに入部届を持って駆け付けてきたのだ。須々木さんは受け取った4通の入部届を生徒会に提出。活動継続が認められ、幽霊部の存続も決まった。

 「本当は部員募集を呼びかけたかったんですが、それだと部の方針に反してしまうので……。でも、今回のことをきっかけに新入部員を一度に4人も迎えることができて本当に良かったです。おかげで今年からは、メンバー5人で一緒に活動できるようになりました」

 雪交じりの風が吹き荒れる中、グラウンドにはこの日も野球部の活動をただ一人眺める須々木さんの姿があった。

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